35年前のショートストーリー

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つまらない講義を出抜けして
ぶらりと歩いていたら
カフェに呼び止められた。

古い倉庫を改造した
雰囲気の良いカフェだった。

ドアを開けて入ると
いきなりスコーンの焼けた甘い香りに包まれた。

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静かなアコスティギターの曲と
静かなざわめきが、
居心地の良いカフェだと
語っていた。

こんなカフェに1人で入るのも
久しぶりのこと。
店の店主らしい女性が
空いている席のどこでもどうぞと
優しげに語りかける。

窓辺に近い席にバインダーノートと
マクロ経済学のテキストを置いて
メニューに目をやると
OLD5のフレンドがあるのが目に付いた。

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いつも行っていたあの店と同じコーヒー。
少しだけ複雑な思いが心をよぎった。
ブレンドコーヒーを頼んで
ふと周りを見回すと
どの席も女性ばかりで男は僕1人。

なんとなく1人浮いているのは
分かっていた。

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最初はあんなに心地の良かった空間も
僕1人だけだとこんなに違ってくるのか。

いつも彼女がいたおかげで
この手のカフェも心地よかったのだと
今になって気がついた。

コーヒーを飲みながら
なんとなく
そこは自分の居場所ではない気がして
しかたがなかった。

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いつもだったら、
こんな風にカフェに呼び止められれば
心地よい時間が過ごせるはずだった。

他愛もない会話に和んで
ゆったりと流れる時間に
身を任せていられたはずだ。

仕方がない。
自分で選択したことだ。
そこに後悔と懺悔しかないとしても。

コーヒーを一杯だけ飲んだら
店を後にしよう。

もう少し時間が経てば、
このゆったり流れる時間にも
馴染めるようになるはずだ。

少しだけ心にリハビリが必要なだけ。
そう自分言い聞かせ、
少しだけ苦味の強いコーヒーを
飲み込んだ。

春になればきっと
この店も心地よく感じられるようになるはずだ。


whlog
by darjeeling_days | 2017-02-17 23:07 | word | Comments(0)

美味しいものを食べて、旅して、写真を撮って、本を読む。そんな日常の極上の楽しみを切り出した、至極個人的なブログです。https://www.tearecipe.net/


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