魅惑の縦書き

2019-04-07 21.44.29

僕は中学時代から日記とも雑記帳とも
詩集ともつかないノートをずっと付けている。
横罫に細かく細い字を書くのが好きだった。

そのノートや日記は今となっては
ずいぶんな量になっているのだが
どれもこれも人様に見せられるような
内容ではなくて、
唯一これを公開したのは高校時代
クラスメートの女の子に対してぐらいだっただろうか。

彼女も似たようなノートを付けていて
どことなく感性が似ていたため
お互いのノートを交換して
時々読んだりした。

僕の横書きの細っこい字に対して
彼女のノートに紡がれた字は
それはそれは美しく
時々縦書きが混ざったそのノートに
僕は嫉妬さえ覚えるほどだった。

自分ではかけないけれど
素晴らしい縦書きの字を紡げる人への尊敬は
その時に生まれたのだった。

色々な経緯があって
もはや彼女の字を二度と見ることは
もうないのだと思うのだが
今でもあんなに美しい字を書く人には出会ったことがない。

だからだろうか、
いまだに縦書きは苦手だ。
というよりも自分の字に対するコンプレクスが
もう40年も続いている。

なんで今頃こんなことを書いているかというと
先日駒沢敏器の残した雑誌の記事を探していて
パラパラとめくっていたCoyote
という雑誌にとても心惹かれる
縦書きの文字が載っていたからだ。

串田孫一のABCという特集のその雑誌に
掲載されていたのは、
哲学者でありエッセイストで
さらには登山家だった串田孫一の
びっしりとノートに綴られた
魅惑的な文字だった。

昔の人はこんな端整な字で
その時々の思いを綴っていたのか。

それからというもの、
僕も万年筆を引っ張り出してきて
ノートに縦書きの字を綴る日々が続いている。

いつか、こんな文字が書ける日が来ることを
ただただ願いながら。




by darjeeling_days | 2019-04-22 20:07 | word | Comments(0)

美味しいものを食べて、旅して、写真を撮って、本を読む。そんな日常の極上の楽しみを切り出した、至極個人的なブログです。https://www.tearecipe.net/


by darjeeling_days
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31