駒沢敏器の翻訳本を読む
2021年 06月 03日
駒沢敏器の仕事を追っていると、避けて通れないのが
敏器が数多く残した翻訳作品だ。
たとえば、翻訳の神様みたいな柴田元幸とか 藤本和子といった
翻訳専業(翻訳に関するエッセイなどはあるが)の職人はいるけれど
翻訳もこなし、エッセイストもこなし、さらに作家もこなす才能は
まさに、敏器ならではだったといえる。
(村上春樹とか高橋源一郎みたいな人もいるけれどちょっとタイプが違う。)
しかもその守備範囲の広さは、ロストジェネレーションから児童向け小説まで。
1989年6月に雑誌Switchに掲載された。
「午前6時、いま君のいる場所」ジェイ・マキナニー著の翻訳からスタートした
駒沢敏器の翻訳作品の内、
本になった翻訳作品は概ね以下のとおり。
『彼女のアラスカ-ベスト・アウトドア・コラム 』(バリー・ロペス著 東京書籍 1991)
『ゼロ・デシベル』(マディソン・スマート・ベル著 新潮社 1991)
『道のまん中のウェディングケーキ』(マディソン・スマート・ベル他著 白水社 1994年)
『空から光が降りてくる ( 上 )( 下 )』(ジェイ・マキナニー著 講談社 1997)
『ナイーヴ・スーパー』(アーレン・ロー著 日本放送出版協会 2003)
『魔空の森 ヘックスウッド』(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著 小学館 2004)
『ABCDJ -とびきりの友情について語ろう』(ボブ・グリーン著 日本放送出版協会 2007)
『スカルダガリー 1』(デレク・ランディ著 小学館 2007)
『トーテム・サーモン-聖なる生命サーモンのおしえ』(フリーマン・ハウス著 山と溪谷社 2007)
『自由生活 ( 上 )( 下 )』(ハ・ジン著 日本放送出版協会 2010)
これ以外に、雑誌に翻訳作品をいくつか残している。
2007年には「思うところあって本当に頑張った」と本人が言っていたように
3冊もの翻訳作品を残している。
しかもその裏では、彼の代表作となった
『アメリカのパイを買って帰ろう 沖縄58号線の向こうへ』のベースを書き始めていたし
webで日記も連載していたわけだ。
これらの本をどんな基準で選び翻訳したのだろう。
最後の翻訳になった『自由生活』などは、
彼の書く各種の文章の根底に流れているもの、
つまり彼が追っていた、
「something for nothing (何かのためではない特別なこと)」
と、しっかりと重なっているのだと思える。
今更ながらだが、これらの作品をじっくりと味わうのである。
by darjeeling_days
| 2021-06-03 20:30
| book:本
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