"make coffee"ではなく"brew coffee"

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日々のルーティンにコーヒーを淹れるということがある。これはオフィスにいても、テレワークで自宅にいても、休日でも、変わることのないささやかな日々の行事だ。コーヒーが日々のルーティンになってどのぐらいの日々が経過しただろうか。この作業は、「コーヒーを淹れる」という作業なのだが、英語でいう"make coffee"ではなく、"brew coffee"という手続きになる。単純にコーヒーを作るのではなく、コーヒーを抽出するためのルーティンだからだ。つまり、湯を沸かし、豆を挽き、ペーパードリップで丁寧に淹れるのだ。この作業を毎朝しないと、その日が始まらない。もちろん、意識をしっかりと目覚めさせるための一杯でもあるわけだ。
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初めてコーヒーを飲んだのがいつだったかは覚えていけれど、コーヒーを飲むということを初めて認識したのは、高校1年の時。当時コーヒーはサイフォンで淹れるものという認識だった。足繁くかようことになる町田のK&Aという今は亡き喫茶店のコーヒーが、サイフォンのコーヒーだったからだ。いまではあまり見ることがなくなったサイフォンコーヒーは、眺めていて楽しい淹れ方だった。だから、僕が自分で初めてコーヒーを淹れたのも、もちろんサイフォンだった。K&Aのコーヒーは、当時のどの喫茶店でもそうだったように、「ブルーマウンテン」、「キリマンジャロ」、「モカ」、「マンデリン」、「コロンビア」など銘柄名がメニューに並んでいた。僕の場合、当時から酸っぱいコーヒーがダメだと自覚したため、キリマンジャロやモカはあまり飲まず、マンデリンとかコロンビアがメインだった(今は、ときどきイルガチャフェなどには手を出すが・・・。)。

大学に入る頃K&Aが無くなり、その後にできたカフェ・ド・サンパ(これも10年ぐらい前にいつの間にか無くなっていた。)は、いまでいうところの「ロングブラック」とか「カフェ・アメリカーノ」(エスプレッソのお湯割り)だった。エスプレッソが先のカフェ・アメリカーノだったか、湯が先のロングブラックだったかは記憶にないが、ブレンドコーヒーを注文すると、エスプレッソマシーンで抽出されたコーヒーが湯で薄められた形で出されていた。飲みやすいコーヒーだったが、真似しようにもエスプレッソマシーンは当時個人で入手するには高すぎて、細かく引いたコーヒーの粉をキャンプ用のパーコレーターで淹れ、濾してエスプレッソまがいのコーヒーを淹れたことがあったっけ。

でも、僕のコーヒーの原点ともいえるのが、やはり町田の、こちらは今でも健在のカフェ・グレのコーヒーだ。グレには店ができたころから通いつめ、いまでも町田に行くたびに必ず立ち寄る店だ。グレではコクテール堂のフレンチローストを、ネルドリップで淹れたコーヒーを出してくれる。ブラックでもカフェオレにしても抜群に美味しいコーヒーだった。ずいぶん昔にグレのみさこさんにネルドリップのコーヒーの淹れ方のコツを教えてもらったことがあった。自分でネルドリップのための器具を一式そろえて、トライしたことがあったのだけれど、やはりグレのような味は出せなかった。ネルドリップは、ペーパードリップより目が粗いので、ストレートに味が出やすく、かなりハードルが高かった。だからだ、僕がいまだにハンドドリップでコーヒーを淹れ続けているのは。20代の頃はあちこちキャンプにも行ったが、その時も必ずキャンプ道具を入れるバッグには、コーヒードリッパーがこっそりと紛れ込んでいた。

ペーパードリップでコーヒーを淹れるようになると、各種の本などで淹れ方を研究した。それでも、やはり自分が美味しい、好きだと思えるコーヒーを淹れるのは、なかなか難しかった。しかし、そんな作業を30年以上も続けていれば、コーヒーを淹れるときに自分なりの淹れ方をするようになるものだ。毎日の朝のコーヒーを淹れる作業を何十年もやってきたのだから、もうほとんどそれは一日を始めるための儀式であり、日々のルーティンと言っていいほどの作業になっている。そしてその作業は、もはや楽しむという域はとうに通り越し、ひたすらにコーヒーを淹れるという、つまり静かに、何も考えず、ほぼ無の状況で行う行為だといえる。
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もちろん、豆は時々気分を変えるために、各種調達することはあるのだけれど、去年の夏に出会ってから、ほとんどがFreshness Coffee Roastorsのコロンビアだ。片岡義男の『深煎りでコロンビアを200グラム』という短篇小説のまねではないのだが、いわゆる「深煎り(フレンチローストなので中深煎りだけど)のコロンビア」だ。これをもう30年来使っている電動ミルで比較的粗く挽いて、薄めに淹れるのが僕のやり方。
薄めというのは、大学時代から20代をとおして通い詰めた八ヶ岳の「ドンキーハウス」のオーナーだった加藤則芳さん(その後、バックパッカー&作家として有名になった)と、親友の駒沢敏器(作家&翻訳家)の二人から秘伝を教わった。10gが図れるメジャースプーンを使って、コーヒー豆1杯分とちょっと(コーヒー粉だと10g)を300ml淹れるのだから、喫茶店ででてくるコーヒーと比べて相当薄い。コーヒー専門店などでは通常10gで140~160ml程度(300ml淹れるなら、豆は18~20g)で淹れるのが標準だろう。でも、この薄さが僕には美味しいと思えるし、一日を始めるのによい濃さなのだ。300mlはコーヒーカップ二杯分なので、結構な量を一回に楽しめるのもいい感じなのである。そうやって、僕の一日が始まるのだ。

ついでに使っている器具を掲げておくと、以下のとおり。
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コーヒーメジャー:カリタ ブラストL
新潟県燕市で作られた「Made in TSUBAME」の刻印が入ったマット仕上げのステンレス製コーヒーメジャー。"for Outdoors"と刻印されているが、ヘビーデューティーという意味。1杯でちょうど挽いたコーヒー豆の粉10g分を測ることができる。
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コーヒーミル:PHILIPS Cafe MOULIN(日本製)
コーヒーを豆から挽いて入れるようになった際に初めて買った電動のコーヒーグラインダー。その前は手動のミルをつかっていたが、どうも面倒で電動に替えたのが1983年頃だっただろうか。もう40年近く使っているが、まったく壊れる気配がなく、現役で活躍している。コードが本体に巻き込めるので、保管もコンパクトにできるのがお気に入り。
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コーヒーミルブラシ:Kalita コーヒーミルブラシ
コーヒーミルは、豆を挽いた後粉が残ってしまう。とくにフレンチローストの場合は、油分が多いため、ミルにしっかりと粉が残る。これをそのままにしておくと、粉が酸化し新しい豆の風味を損うことにもなるので、きちんと手入れすることが重要なのだが、ミルに付属するブラシは小さくて使いにくい。このKalitaのブラシは大きくてブラシ部分も長いため、静電気でくっついている粉を落とすのにとても便利なのだ。今では朝の儀式になくてはならない一つになっている。
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ドリッパー:kalitaドリッパー101-D
メリタの「アロマフィルターAF-M 1×1」やハリオの「V60透過ドリッパー01クリア」も試したのが、Kalitaの101-Dの味わいが一番好みだった。湯の落ちる速度が比較的早く雑味の少ないすっきりとしたコーヒーが仕上がるV60も持っているので、時々これで淹れてなんとなくネルドリップ的な味わいを楽しむこともあるのだけれど、やはり三つ穴の、雑味がでる前に美味しさだけをドリップできる101-Dを長年使っている。そういでば、かなり昔にNifty Serveのコーヒーフォーラムで、どのドリッパーがいいかという論争があったな。コーノ式とカリタ式で二分して、戦争状態だったのが懐かしい。
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コーヒーケトル:HARIO(ハリオ) V60ドリップケトル ヘアラインシルバー
全ての熱源(IH200V・100V、ガスコンロ、他)に対応しているコーヒー用のケトルだが、湯の温度を90℃ぐらいにしたいので、僕の場合これで直接湯を沸かさず、T-Falで沸騰させた湯をケトルにうつしてから、コーヒーを淹れる。容量が800mlあるので、半分弱ぐらいを目安に湯を入れる。先が細くてとても注ぎやすい。ちなみにオフィスではこれがないので、T-Falの注ぎ口に急須スキッターを付けている。
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コーヒービーカー:HARIO(ハリオ) B-300 SCI ビーカー300ml
ドリッパーをマグの上に乗せて淹れれば、本当はビーカーは不要なのだけれど、マグ一杯分より多いコーヒーを毎朝淹れるため、このようなビーカーが必要になる。それに湯の量を測る場合、ケトルに例えば300mlを入れておくと、全部注いだとしても必ずしも出来上がりが300mlになるわけじゃないので、出来上がりを300mlにするために、このビーカーを使っているわけだ。
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マグ:ロイヤルコペンハーゲン ブルーフルーテッド メガ スタイルカップ L
カフェ・グレで出会ったロイヤルコペンハーゲンのカップたちは、その後長い間僕の憧れのカップだった。ただ、グレでブレンド用に使う「トランクェーバー」のカップは小さいので、カフェオレ用に使っている「ブルーフルーテッド プレイン ハイハンドル マグカップ」を長年使っていた。しかし、粗忽ものの母にある日見事に割られてしまった(母にも家人にもいくつもの食器を割られたものだ。なので、今では大切な食器は自分で洗って片付けることにしている。)ので、現在は240ml入るブルーフルーテッド メガ スタイルカップを愛用している。ただ、こればかりだと飽きるので、京都の骨董屋で見つけた渋めのそば猪口も使っている。

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by darjeeling_days | 2021-09-26 10:00 | coffee:珈琲(豆) | Comments(0)

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