京都からのメッセージ

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写真:稲垣伸寿氏

ひさしぶりに駒沢敏器関連のプロジェクトが動き出したので、元小学館の辣腕編集長だった稲垣さんも、敏器の墓前に挨拶したいと言ってくださっていたのだけれど、仕事の関連で京都に行かなければならなくなってしまったと、とても残念がっていた。

京都は敏器が最後に旅した場所であり、そして彼の遺作になった「秋になれば街は」の舞台でもあった街だ。以前は僕も京都には年に数回訪れ、祇園や先斗町などをぶらぶらしたものだった。COVID-19のせいですっかり京都にもいかれなくなってしまい、とても残念に思っていたところ、稲垣さんがFacebookのメッセージで京都の画像を送ってくれた。

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稲垣さんのメッセージに書かれた「駒沢君の最後の短編」とは、「秋になれば街は」のことだ。とても京都の旅情を感じられる、ハートウォーマーな大人の一編で、本当に後世にまで残したい作品なのだけれど、彼の私生活を知っている僕らには、なんかちょっとだけ淋しく思える小説でもある。

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写真:稲垣伸寿氏

敏器が最初に京都にはまったのは、SINRAという昔発行されていたアウトドア向けの雑誌に連載したルポルタージュで、京野菜(京都伝統野菜研究会)の取材をした時ではなかったか。京都でじっくりと育てられた野菜が、京都の老舗の料理人の手に係ると、なんと繊細で心からホッとできる料理に仕上がるのか、そんな話を何度も町田のカフェ・グレで聞かされたのを思い出す。

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写真:稲垣伸寿氏

コーヒーも本も酒も好きだった敏器には、京都の水はあったのだろう。稲垣さんの送ってくれた酒の肴になりそうな料理写真を見ていたら、”先斗町のバーで酔っぱらうと、うまい肴を食べたくなるんだよな”と彼からよく聞かされたことを思い出した。

彼が良く語ってくれた別の話には、”恵文社一乗寺店の本の並び方がなんとも好きだ”とか、”京都大学の前にあるの進々堂の大きな木の机で小説とかのことを考えていると、まるで時間が止まったようになる”ことなんていう話があった。もちろん僕も両方とも行ったことがあるのだけれど、なんで敏器がいたときに一緒に行かなかったんだろう。昔NYに赴任していた際に、仕事場との往復だけだった僕を、ビレッジの奥深くに連れ出してくれた時のように、敏器と一緒に京都を歩いたら、きっと僕は一方的に話を聞くだけだっただろうが、それでも、直珈琲の深煎りのおいしいコーヒーをご馳走してあげることぐらいはできたのではないだろうか。

稲垣さんの京都からのメッセージを読んで、”いつか春や秋といった季節の変わり目の京都を、敏器と一緒に歩きたいと心から思った。”と、Morgen Roteの追悼号に綴ったのを思い出した。


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by darjeeling_days | 2022-03-08 06:56 | book:本 | Comments(0)

美味しいものを食べて、旅して、写真を撮って、本を読む。そんな日常の極上の楽しみを切り出した、至極個人的なブログです。https://www.tearecipe.net/


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