”ボイジャー”プロジェクト、オープン

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先日、コロナワクチンのブースター接種直後で、風鯨社の『ボイジャーに伝えて』出版準備の三回目のミーティングが開催された。僕は欠席してしまったのだけれど、もともと僕は単なる応援団なので、いろいろと稲垣さんと鈴木さんの打合せは進んだようだった。

今回のこの『ボイジャーに伝えて』の出版は、Morgen Roteの僕らにとってみると、敏器作品を世に出すお手伝い、つまり、”駒沢敏器作品出版プロジェクト第一弾”=”ボイジャープロジェクト”ということになる。

前回元小学館文芸誌の辣腕編集長稲垣さんが手を入れた原稿を鈴木さんが受け取って、さらに中身を吟味した結果、二人が気になっていた部分は、章を区切ることで解決を見たらしい。そして懸案の装丁も、前回の『人生は彼女の腹筋』の作家さんにお願いし、そして肝心の著作権を管理されている敏器の従兄の方にも契約書に印鑑をもらったということで、満を持して、風鯨社の鈴木さんのBlogに”ボイジャープロジェクト”の片鱗がUPされたのだ。

今回出版される『ボイジャーに伝えて』は、稲垣さんが手がけていた文芸誌『きらら』に2005年7月から2007年5月まで連載された長編小説で、2008年春には本になるはずだったものだ。しかし、敏器があれこれ悩み、手を入れようとしていたらしく、2011年に至るまで稲垣さんとあれこれ書籍化に向けて真剣に話し合いをし、「もう少し小説と真剣に向き合ってみます」との言葉と共に、ゲラをもったまま、敏器は逝ってしまったのだった。

連載中、敏器は、なぜかpdf化された原稿をメールでいつもの仲間の中では僕にだけ送ってくれた。ちょうど僕は本業で役員になったばかりでバタバタしていたため、敏器から届いた原稿を斜め読みしただけで、”おもしろかった”といったいい加減な感想を送り返しただけだった。もしかしたらほかの友人ではなく僕にだけ送ってきたのは、今から思うと何かのシグナルだったのかもしれない。僕から何かを引き出そうとしていたのだろうか。結局それにこたえることもできずに、そして直接話もできないまま、敏器は旅に出てしまった。

ちょうど一年前に、一念発起して彼の作品を集め始めたとき、たしか『ボイジャーに伝えて』は原稿があったはずと、過去のメールをサルベージュしたのだけれど、結局7回目までしか見つからなかったけれど、その原稿を読んで、敏器のそこで描こうとしていた静かにでも奥深い湖のようなストーリーの背景や、その湖の水面のゆらぎや波紋の透明感すら感じさせるその筆が描いた主人公たちを知り、深く感動した。どうしても最後まで読みたくて、稲垣さんに泣きついたら、きららに連載されていたものを送ってくれたのだった。

それ以来、これは世に出さないとと思っていたのだけれど、稲垣さんも同じ思いだったことを知り、たまたま敏器の原稿を集める作業の中で敏器ファンだと知った風鯨社の鈴木さんと知り合ったことから、稲垣さんと鈴木さんを引き合わせ、このプロジェクトが始まったのだった。

当時、鈴木さんは初めての本を世に出すために奔走していたのだけれど、一方で、”ボイジャープロジェクト”には強い思い入れを持ってくれたため、稲垣さんとは話がかみ合い、小学館から了解を取り付けることや、手持ちのきららの原稿確認や校正などを稲垣さんが、そして僕は敏器の著作権継承者の方に連絡し、この本の出版について内諾を頂く作業を行った。敏器の従兄だというその方は、敏器の作品を世に出すことに前向きに考えてくださっていて、”ボイジャープロジェクト”について歓迎してくださった。従兄さんとは電話越しに敏器との思い出話を1時間近くしゃべってしまったのだけれど、そこにはやっぱり僕の知らない敏器がいたのは面白かった。

そうして、『ボイジャーに伝えて』の出版に向けた作業が、表にでて、これから鈴木さんの大作業が始まることになる。僕はただ見ているだけなのが申し訳ないのだが、折角の素晴らしい本なので、なにかできないかなと考え始めている。まずは、敏生と親交のあった作家さんや編集者、あるいは各種の団体などをリストアップして、鈴木さんに渡し、彼女が作る予定のブローシャー(いわゆるチラシ)やプルーフ(完成前の校正刷りを冊子にしたもの)を送ってもらうことにした。クラウドファンディングなどという話もあるのだけれど、本屋さんできちんと売りたいので、それはどうなんだろうかと、鈴木さんが頭を悩ませている。

とにかく、折角世に出すのなら、多くの人に読んでもらいたい。敏器らしい不思議な小説なのだけれど、敏器の世界観に共感を覚える人なら、絶対に気に入ってくれる本だ。最後まで敏器が校正し、手がけられなかった点が大きな痛手だけれど、それを抜きにしても読んで損はない小説だと、僕はそう思っている。


*裏ではいろんな方々にお世話になっている。
 著作権継承者の方へのコンタクトに際には、『人生は彼女の腹筋』を稲垣さんが手がけたときの小学館の記録と、『ミシシッピは月まで狂っている』の電子化の際にご連絡いただき情報提供させていただいた神戸の出版社「万象堂」の平田さんに多大なるご協力を頂いた。
 この手の作業は、臆することなく人とコンタクトすることが「鍵」になることを身をもって体験した。
 人と人をつなぎ、つながることで生まれるもの。ありがたいことなのである。


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by darjeeling_days | 2022-04-21 21:56 | book:本 | Comments(0)

美味しいものを食べて、旅して、写真を撮って、本を読む。そんな日常の極上の楽しみを切り出した、至極個人的なブログです。https://www.tearecipe.net/


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