The Big Chill

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駒沢敏器に勧められた映画「再会の時」。ずいぶん前に一度見たのだけれど、その時はフーンで終わってしまっていた。しかし、「駒沢敏器作品出版プロジェクトⅡ」のために、昔の作品をあれこれひっくり返しているときに、先見日記に敏器がこの作品について書いているのを読んで、もう一度見直してみようと思ったのだった。

日本語は「再会の時」。でも、原題は「THE BIG CHILL」だ。Chillとは、寒いという意味。Big Chillで大寒波というような意味になる。なぜ、これが再会の時と訳されてしまったのか。確かに映画の表面的な主題は「再会」だ。ミシガン大学という、ある種エリートな大学時代の仲間が、自殺した友人の葬儀に集まって数日すごすというは話だからだ。

しかし、これを単純な再会と言ってしまうには、やはり想像力が欠如しているとしか言いようがない。葬儀で集まったにもかかわらず、その友人の死については、ほぼ語られない。同じ時を共有した友人の死をひと時は悲しむが、彼の死の原因について掘り起こそうとはしないし、バカなことをしたとが嘆くわけでもない。みな、過去の大学時代を懐かしみ引きずっている大人になれない大人たちが集まったドラマなのだ。彼らは現状の生活では、それなりの地位を築いたものもいる。しかし、みなどこか満足していない。同様に不満や不安を抱えている。そして大学時代のあの栄光の時間を懐かしむ。いやむしろしがみつこうとしているように見える。

なんとなく、セントエルモスファイヤーの大人版のようにも見える。そういえば、セントエルモスファイヤーも敏器がこれ面白いよとDVD(当時はまだビデオ(VHS)だった。)を教えてくれたのだっけ。そして敏器は、ボブグリーンの『ABCDJ―とびきりの友情について語ろう』も訳したのだったな。

大人になったはずなのに、大人になり切れていない彼らの、いらだちや不安。失われた時を経て、当時の傷をなめあう数日間の、退屈な時間。その場面のいくつかに流れるマーヴィン・ゲイの”I Heard It Through the Grapevine”、ビーチ・ボーイズ”Wouldn’t It Be Nice”、パーシー・スレッジ”When a Man Loves a Woman”、ザ・バンド”The Weight”といった60年代の往年の名曲。

じゃあ、今のお前らはどうなんだと、映画の中の登場人物が僕に問いかける。だがしかし、少なくとも僕らはThe Big Chillなどという題名がつけられるほど、過去には縛りつけられてはいないし、現状に不満もない。もちろん、同じような青春が昔にはあった。ともに過ごした仲間もいる。いまだに彼らとはつながっている。でも、あのころを懐かしむかけれど、そこから抜け出せないというほどではない。懐かしむけれど、その頃に戻ってもう二度とこっちに戻ってきたくないと思うほどではない。

『再会の時』などとロマンチックな日本語タイトルにしてしまった、この映画のプロモーターは、この映画の本質を務抜くことができなかったのだろうか。見終わった感想として、それがなんとも残念に思えた。

一つおもしろいと思ったのは、この映画の公開は1983年。ちょうど僕が社会人になった年だ。そしてこの映画の自殺した友人の恋人役で出てくる若い女性クロエ。彼女を演じた女優メグ・テリーは、僕らと同じ年だ。だから、この映画の登場人物の社会的背景は、丁度僕らよりも10年早い時代に青春を終えた、日本でいうところの団塊の世代。アメリカだとベビーブーマーの人たちだったということか。ヒッピームーブメントとか、学生運動とか、そういうものを学生時代に体験した彼らが、社会人になり会社勤めをはじめたら、やはりなにか失ってしまったものを感じたのは、必然だったのかもしれない。そんな気はする。僕らが青春時代を過ごした時とは時代が違ったのだろう。

もう少し時がたって、人生の終わりが見えてきたころになると、またこの映画、そして僕らの過ごしたあの頃が、違ったように見えてくるのだろうか。

日本語タイトル:再会の時
原題:THE BIG CHILL
上映時間:105分
製作国:アメリカ
製作年度:1983年
監督:ローレンス・カスダン
脚本:ローレンス・カスダン、バーバラ・ベネディック
トム・ベレンジャー=サム・ウェバー
グレン・クローズ=サラ・クーパー
ウィリアム・ハート=ニック・カールトン
ケヴィン・クライン=ハロルド・クーパー
ジョベス・ウィリアムズ=カレン・ボーウェンズ
ジェフ・ゴールドブラム=マイケル・ゴールド
メグ・ティリー=クロエ
メアリー・ケイ・プレイス=メグ・ジョーンズ
ドン・ギャロウェイ=リチャード・ボーウェンズ

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by darjeeling_days | 2022-06-30 22:30 | drama/cinema:ドラマ | Comments(0)

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