時は巡る

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高校2年の時に知り合い、長らく遊び仲間だった駒沢敏器の命日がまたやってくる。今年で11回目。あっという間に時だけが流れていくような気がする。

2012年3月8日。彼の訃報を知ったのはYahooニュースでだった。前年の暮れにメールのやり取りをしたのが最後だった。多感な10代から20代を共にし、30代半ばまでは、いつものカフェに集まり、そのあとオートバイに乗って焚き火をしに行ったり、キャンプに行ったり、そばを食べるだけとか温泉に入るだけという理由を付けて信州などを走ったものだった。何よりも、高校時代からMorgen Roteというミニコミ誌を作り、Morgen Rote編集部という、まさに大学のサークルのような集まりをメインに、様々な”野遊び”をした。

それぞれが仕事を持ち、家族を持ち、子供を持つにつれ、自然と会う機会は減ったけれど、それでも年に何度か会ったり、3か月に1度程度のメールの交換は続いていた。特に敏器はライターという職業を選び、その道を歩いて行ったので、彼の消息は追いかけやすかった。雑誌の編集者からトラベルライター、そして作家へと転身していった彼の作品は、K&Aのノート時代から彼のひそかな文章のファンだった僕には、特に、中間管理職という激務を抱えストレスマックスだった当時の僕にとっては、一風の清涼剤のようでもあった。

僕にはプライベートを含むいろいろな心情をメールで伝えてくれた彼なのに、病気のことは一切語ろうとせず、最後まで僕らは彼の訃報に至る原因を知ることはなかった。そしてそれは今でも不明だ。そんな部分には、今でも一抹の淋しさを感じざるを得ないのだけれど、それよりもなによりも、青春時代を共に過ごした親友の死は、当時本当に受け入れがたいほど衝撃だった。

あれから11年がたった今でも、僕らが集まっていると敏器がひょこッと現れるのではないかと、そんなことを思う。そしてここで一緒に語らっていても何の不思議もないほど、彼の存在は自然なのだ。だから、彼の不在こそ、不自然で、あり得ないことなのである。僕らはいまだにそれを信じていないのかもしれない。彼はまた世界のどこかを旅しているだけ。そんな風に理解している。

去年は風鯨社から『ボイジャーに伝えて』という小説が出版された。そして来月の頭にはスイッチコーポレーションから『とーあんしあさ』が発行される予定になっている。敏器がCoyoteに連載していた沖縄宮廷料理の伝承者山本彩香さんの料理を取り上げたルポルタージュだ。

そして、『ボイジャーに伝えて』を読んで、他にも読んでみたいという人たちのために、現在絶版になってしまっている『地球を抱いて眠る』と『語るに足るささやかな人生』を復刻しようという話が進み始めた。とてもありがたいことだ。さらに、今月末には、『アメリカのパイを買って帰ろう: 沖縄58号線の向こうへ』を復刻させる話がスタートする。多くの敏器ファンが、こうして彼の作品を残そうと動いてくれるのが、僕にはとても嬉しい。

毎年、命日の3月6日前後に敏器の墓のある長津田の福昌寺にMorgen Rote編集部の旧友たちと集まり、彼の墓前に手を合わせてはいるけれど、そして線香をまるであの頃そうしていたように盛大に焚き火のように燃やし、「敏器!元気か!」って思い思いに彼に語り掛けるけれど、それでもなお、「わりーわり、ねぼーしちまったんだよ」と敏器がこの場にやってくるのではないかと、今でも僕らはそう思っている。

福昌寺のしだれ梅と、早咲きの桜は、今年も綺麗に花を付けた。来年はもう13回忌だ。時の流れは、無情にも早い。

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福昌寺
住所:横浜市青葉区恩田町1021-1

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Commented by myuyama at 2023-03-08 17:15
今日は駒沢さんの命日ですね。この時季になると、駒沢さんの本を開いたりします。長編小説が出版されたのは知りませんでした。読んでみたいな〜、でも寂しくなっちゃうかなぁ。。。
Commented by darjeeling_days at 2023-03-09 10:32
> myuyamaさん
3月8日に彼の死が判明しましたが、位牌の命日は6日で、だから僕らは6日前後に毎年墓参りに行くことにしています。
年によって違うのですが、彼の眠る寺に早咲きの桜があって、いつも墓参に出かける前に、今年はその花が咲いているかな?と思いながら出かけるのです。今年もいくつか花をつけていました。
昨年発行された『ボイジャーに伝えて』は、おそらく彼の最高傑作ではないかと思います。校正原稿を抱えたまま逝ってしまったので、完成品ではないのですが、彼らしい言葉が並んでいます。彼は「恋愛小説」と呼んでいましたが、その実、もっともっと深い話です。機会があったら是非、手にとってみてください。
Commented by myuyama at 2023-03-10 08:07
墓参された時、桜が迎えてくれたら、それは駒沢さんの歓迎の気持ちですね。命日は6日なんですね。憶えておきます。今、アメリカのパイを読んでいます。次はボイジャーに繋ぎますね。
駒沢さんのことは、今でもこのブログで思い出すことが出来るので、本当に感謝しています。これからも宜しくお願いします。笑
Commented by darjeeling_days at 2023-03-13 08:49
> myuyamaさん
大体毎年早咲きの桜なので、たいてい咲いているのですけれどね 笑

4月1日に、スイッチパブリケーションから敏器の新しい本が発売されます。ずいぶん前からスイッチの新井さんに「出版してください」とお願いしてきたのだけれど、ようやくという感じです。3月発売のcoyoteにその情報が載っています。編集者の稲垣さんから僕が預かって、新井さんに渡した未完の小説の冒頭部分も、掲載されていますので、よろしければ。
by darjeeling_days | 2023-03-05 11:45 | life:生活一般 | Comments(4)

美味しいものを食べて、旅して、写真を撮って、本を読む。そんな日常の極上の楽しみを切り出した、至極個人的なブログです。https://www.tearecipe.net/


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