冥界のラビリンスへようこそ!
2023年 04月 10日
青山一丁目と赤坂見附のちょうど中間に位置する赤坂ガーデンシティにある企業の社長を訪ねた帰り道、半蔵門まで歩くかなと思い、赤坂見附方面に歩き始めたら、ちょうど青山通りの向こう側に、赤い提灯が並んでいるのを見つけた。こんなところになんだろう?と思ったら、かの有名な豊川稲荷の東京別院だった。東京に別院があるということは知っていたのだけれど、おお、こんなところにあったのか!、ということで、これは寄らない手はないのである。
お稲荷さんというと、通常は伏見稲荷大社を総本宮とする神道上の稲荷神社のことで、古事記に登場する女神、宇迦之御魂命(日本書紀では倉稲魂命として登場する。)を祀った神社だ。稲に宿る神秘な霊と考えられ、穀物の神としても知られる。
ところが、豐川稲荷は正式名を「宗教法人 豐川閣妙嚴寺」と称し、山号を圓福山とする曹洞宗の寺院なのである。ご本尊は、千手観音だが、境内に祭られている豊川ダ枳尼眞天が有名になり、こちらが前面に立つに至ったという。豊川ダ枳尼眞天とは、つまり、仏教の荼枳尼天のことだ。もともとは、愛染明王の前身であり、その起源はインドのパラマウ地方(ベンガル地方の南西部)に居住していたドラビタ族の一部族、カールバース人が地母神の配偶者として信仰していた女神であり、元は農業神だった。性や愛欲を司る女神とされ、紀元前3世紀頃のインドで流行し、紀元3世紀ころにはさらに大憤怒の性格を持つ凶暴な神で、ヒンドゥー教では裸身で虚空を駆け、人肉を食べる魔女だったが、仏教に取り入れられ、護法善神の一尊となった。
なぜダ枳尼が稲荷かといえば、稲穂を荷い白い狐に跨っているからだと言われる。これが日本における稲荷信仰と習合し、お稲荷さんとしてまつられるようになったらしい。
宇賀弁財天にも狐がついて回るので、どこかしら弁財天との共通項もあるように見えるダ枳尼だが、では、豊川稲荷としてまつられるようになった経緯としてはどうなのかというと、第84代天皇・順徳天皇の第三皇太子だった寒巖禅師が、豊川ダ枳尼眞天を感得したことに始まるという。
ところが、豐川稲荷は正式名を「宗教法人 豐川閣妙嚴寺」と称し、山号を圓福山とする曹洞宗の寺院なのである。ご本尊は、千手観音だが、境内に祭られている豊川ダ枳尼眞天が有名になり、こちらが前面に立つに至ったという。豊川ダ枳尼眞天とは、つまり、仏教の荼枳尼天のことだ。もともとは、愛染明王の前身であり、その起源はインドのパラマウ地方(ベンガル地方の南西部)に居住していたドラビタ族の一部族、カールバース人が地母神の配偶者として信仰していた女神であり、元は農業神だった。性や愛欲を司る女神とされ、紀元前3世紀頃のインドで流行し、紀元3世紀ころにはさらに大憤怒の性格を持つ凶暴な神で、ヒンドゥー教では裸身で虚空を駆け、人肉を食べる魔女だったが、仏教に取り入れられ、護法善神の一尊となった。
なぜダ枳尼が稲荷かといえば、稲穂を荷い白い狐に跨っているからだと言われる。これが日本における稲荷信仰と習合し、お稲荷さんとしてまつられるようになったらしい。
宇賀弁財天にも狐がついて回るので、どこかしら弁財天との共通項もあるように見えるダ枳尼だが、では、豊川稲荷としてまつられるようになった経緯としてはどうなのかというと、第84代天皇・順徳天皇の第三皇太子だった寒巖禅師が、豊川ダ枳尼眞天を感得したことに始まるという。
東京別院は、江戸時代、大岡越前守忠相が、自ら日常信仰していた豊川稲荷の分霊を屋敷神として祀っていたものを、時代が下った後に別院としてまつるようになったらしい。つまり、明治20年に赤坂一ツ木の大岡邸から現在地に移転遷座し、愛知県豊川閣の直轄の別院となり今日に至ったというので、この境内自体の存在は、歴史的にはそれほど古くはなさそうだ。
江戸各地には、神道の神としてのお稲荷さんが本当にあちこちに祭られているので、豊川稲荷という存在は、稀有の物だったのだろうけれど、大雑把な江戸の人たちは、神道の神と仏教の神を明確には分けて認識していなかったのだろう。そのことは、この豊川稲荷東京別院の中を歩いてみるとよくわかる。
江戸各地には、神道の神としてのお稲荷さんが本当にあちこちに祭られているので、豊川稲荷という存在は、稀有の物だったのだろうけれど、大雑把な江戸の人たちは、神道の神と仏教の神を明確には分けて認識していなかったのだろう。そのことは、この豊川稲荷東京別院の中を歩いてみるとよくわかる。
本堂を参拝したのち境内を歩いてみると、キツネがいたるところに鎮座している。よくお稲荷さんで見かける狐とまるで変わりがなく、ここはお寺なの?神社なの?と思うほど、区別が難しい。どの狐も、いわゆる狐顔をしており、珠を口にくわえたりしている。
もっとも、神社としてのお稲荷さんも、普通の神社と比べると、その成り立ちは特殊で、いうなれば外来宗教とでもいうべき存在ではある。つまり渡来人であった秦氏の氏神的稲荷信仰が広がったものだからだ。その中心にいる宇迦之御魂命は、須佐之男命が櫛名田比売の次に娶った神大市比売との間に生まれ子供で、兄の大年は、結構活躍するのだが、一方で宇迦之御魂命は『古事記』『日本書紀』ともに名前が出て来るだけで事績はない。ただし、平安時代の『延喜式』(大殿祭祝詞)には、トヨウケビメ(伊勢神宮の外宮に祭られた農業の神様)と同じとされている。素戔嗚の子なのに、アマテラスと一緒に祭られているなどという話が、わけわからんと思うけど、本当、こういうところが、日本神話のミステリーたる所以。
こんなお稲荷さんなので、キツネが沢山いるお稲荷さんは、神道でも仏教でもどっちでもいい(明治以前は実際に寺と神社が一体になった場所は多かったらしい。明治になって廃仏毀釈が行われ、今みたいに寺は寺、神社は神社に区分されているけれども。)のだろう。
もっとも、神社としてのお稲荷さんも、普通の神社と比べると、その成り立ちは特殊で、いうなれば外来宗教とでもいうべき存在ではある。つまり渡来人であった秦氏の氏神的稲荷信仰が広がったものだからだ。その中心にいる宇迦之御魂命は、須佐之男命が櫛名田比売の次に娶った神大市比売との間に生まれ子供で、兄の大年は、結構活躍するのだが、一方で宇迦之御魂命は『古事記』『日本書紀』ともに名前が出て来るだけで事績はない。ただし、平安時代の『延喜式』(大殿祭祝詞)には、トヨウケビメ(伊勢神宮の外宮に祭られた農業の神様)と同じとされている。素戔嗚の子なのに、アマテラスと一緒に祭られているなどという話が、わけわからんと思うけど、本当、こういうところが、日本神話のミステリーたる所以。
こんなお稲荷さんなので、キツネが沢山いるお稲荷さんは、神道でも仏教でもどっちでもいい(明治以前は実際に寺と神社が一体になった場所は多かったらしい。明治になって廃仏毀釈が行われ、今みたいに寺は寺、神社は神社に区分されているけれども。)のだろう。
豊川稲荷東京別院の境内には、本堂の他に、奥の院、融通稲荷、三神殿といった中規模のいくつかのお堂(社?)に加え、叶稲荷、弁財天、大黒天などを祀ったお堂も並んでいる。
面白いのが融通稲荷。こちらでお参りをした後、そこに用意されている黄色い袋に入った小銭を頂戴し、財布に入れておくと、お金が入ってくるというもの。銭洗弁天と発想が近いけれど、お賽銭を奉納してお参りをして、10円の入った袋をもらってくるというシステムは、やはり稀有な存在だ。僕も一つ頂戴して、財布にしっかり納めさせてもらった。
ちなみに三神殿は、宇加神王、太郎稲荷、徳七郎稲荷を祀る3つの社からなる。鳥居が立っているのが印象的だった。ここお寺だよね?どんどんこんがらがってくる。
まず、宇加神王は、その名前のとおり宇迦之御魂神に由来する宇賀神のことで、財をもたらす福神として信仰されている。弁才天と習合あるいは合体したとされ、この合一神は、宇賀弁才天としても祭られている。こういうのをみると、日本の神社に祭られた神が、素直にそのままの系譜をたどっているわけではないということに気が付かせられることにもなる。確かに、京都の八坂神社は素戔嗚がまつられてはいるが、その正体は牛頭天王だしね。でも牛頭天王と素戔嗚が一体化したというのは、素戔嗚がそれなりに荒ぶれた神だったという証跡でもあるのだろうと思う。
次に、太郎稲荷は、江戸浅草の北側にあった立花家下屋敷の屋敷神で、1803年(享和3)に大いに流行しだしたが、半年ほどですたれてしまったらしい。流行しているときは、〈諸人参詣群集し、近辺酒食の肆夥しく出来、賑やか〉な状況であったという。江戸っ子の熱しやすく冷めやすい気質の表れだろうか。諸々の祈願事を叶え、特に商売繁盛に御利益があるらしい。
徳七郎稲荷に関しては、なんでも対人関係を円満にしてくれるご利益があるといわれるが、その素性はわからなかった。
面白いのが融通稲荷。こちらでお参りをした後、そこに用意されている黄色い袋に入った小銭を頂戴し、財布に入れておくと、お金が入ってくるというもの。銭洗弁天と発想が近いけれど、お賽銭を奉納してお参りをして、10円の入った袋をもらってくるというシステムは、やはり稀有な存在だ。僕も一つ頂戴して、財布にしっかり納めさせてもらった。
ちなみに三神殿は、宇加神王、太郎稲荷、徳七郎稲荷を祀る3つの社からなる。鳥居が立っているのが印象的だった。ここお寺だよね?どんどんこんがらがってくる。
まず、宇加神王は、その名前のとおり宇迦之御魂神に由来する宇賀神のことで、財をもたらす福神として信仰されている。弁才天と習合あるいは合体したとされ、この合一神は、宇賀弁才天としても祭られている。こういうのをみると、日本の神社に祭られた神が、素直にそのままの系譜をたどっているわけではないということに気が付かせられることにもなる。確かに、京都の八坂神社は素戔嗚がまつられてはいるが、その正体は牛頭天王だしね。でも牛頭天王と素戔嗚が一体化したというのは、素戔嗚がそれなりに荒ぶれた神だったという証跡でもあるのだろうと思う。
次に、太郎稲荷は、江戸浅草の北側にあった立花家下屋敷の屋敷神で、1803年(享和3)に大いに流行しだしたが、半年ほどですたれてしまったらしい。流行しているときは、〈諸人参詣群集し、近辺酒食の肆夥しく出来、賑やか〉な状況であったという。江戸っ子の熱しやすく冷めやすい気質の表れだろうか。諸々の祈願事を叶え、特に商売繁盛に御利益があるらしい。
徳七郎稲荷に関しては、なんでも対人関係を円満にしてくれるご利益があるといわれるが、その素性はわからなかった。
奥の院の手前には、祈願が成就した人たちが奉納したとされる赤い旗や、いくつものお稲荷さんが並び、まさにパワースポット的な感じがする一角だ。大岡越前の位牌を祀る大岡廟が左手側にあるらしいのだが、今回は見逃してしまった。
奥の院は、 大岡邸の屋敷稲荷を祭ってあるという。なので、いわゆるお稲荷さんとしての豊川稲荷は、こっちが本家ということになるのだろう。パワースポットとしてこの奥の院は有名らしく、皆必ずここをお参りしていくようだ。
奥の院は、 大岡邸の屋敷稲荷を祭ってあるという。なので、いわゆるお稲荷さんとしての豊川稲荷は、こっちが本家ということになるのだろう。パワースポットとしてこの奥の院は有名らしく、皆必ずここをお参りしていくようだ。
豊川稲荷東京別院は、霊狐があ触れ帰っているのだが、圧巻なのは、境内の一番西側にある霊狐塚。三段造りの八角型大理石塔がたち、各地の廃院したお寺や神社から集められた霊狐がたくさん並んでいる場所だ。狐のお墓のようなもので、集められた狐はおたきあげ供養をして地下へ納められているという。まるで霊界のラビリンス的な場所。あまり近づいてはいけないような気もするので、早々に退散した。
奥の院の前には、昔風のおみくじ処があり、おみくじを引き、出た番号の棚に収まるおみくじをもらって帰る方式だ。こういうおみくじが最近は少なくなった。昔はおみくじはあまりひかなかったのだけれど、最近はおみくじの文化的側面に興味があるので、主要な神社などに行くと、おみくじを引くことにしている。今回も引いてみたら、六十二番 大吉だった。どれもいいことが書いてあったけれど、「失い物出ず」というのだけがマイナスポイント。落とし物とか忘れ物には気を付けろということか。
神社仏閣を訪問すると、必ず絵馬を写真に撮っているのだけれど、豊川稲荷の東京別院には、何種類かの絵馬があった。目を引くのが、いなりんという黄色い(金色?)の狐のキャラクターの絵馬だった。
他にもハート形の絵馬(豊川稲荷は縁結びと縁切りの両方に効果があるのだとか。本堂の横に入った先には縁切り稲荷というのが確かにあった。)とか、鳥居にお稲荷さんの絵馬(ここは神社か?と錯覚するデザイン。お寺なんだけれど。)などもあった。面白いなと思ったのが、この鳥居にお稲荷さんの絵馬には、みんなが「Snow Manのコンサートチケットが当たりますように」と書いてあったこと。Snow Manって、あのジャニーズのグループ?とは分かったけれど、どうやら、最近youtubeのSnow Manのチャネルで豊川稲荷が登場したらしい。それにちなんでということなのだろうか。ジャニと豊川稲荷、結構関係があるようだった。まあ、僕には関係ないけれど。こういうのが若い人たちに、古い信仰(変な意味ではなく、むしろ日本文化としての神道や仏教という意味で。)に興味をもたらすのは、ある意味良いことなのかもしれないね。
なんとも不思議な豊川稲荷東京別院探索だった。
他にもハート形の絵馬(豊川稲荷は縁結びと縁切りの両方に効果があるのだとか。本堂の横に入った先には縁切り稲荷というのが確かにあった。)とか、鳥居にお稲荷さんの絵馬(ここは神社か?と錯覚するデザイン。お寺なんだけれど。)などもあった。面白いなと思ったのが、この鳥居にお稲荷さんの絵馬には、みんなが「Snow Manのコンサートチケットが当たりますように」と書いてあったこと。Snow Manって、あのジャニーズのグループ?とは分かったけれど、どうやら、最近youtubeのSnow Manのチャネルで豊川稲荷が登場したらしい。それにちなんでということなのだろうか。ジャニと豊川稲荷、結構関係があるようだった。まあ、僕には関係ないけれど。こういうのが若い人たちに、古い信仰(変な意味ではなく、むしろ日本文化としての神道や仏教という意味で。)に興味をもたらすのは、ある意味良いことなのかもしれないね。
なんとも不思議な豊川稲荷東京別院探索だった。
by darjeeling_days
| 2023-04-10 11:15
| temple:寺院
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